春になると楽しみな桜の花見、一方で夏に甘酸っぱい美味しさを届けてくれるさくらんぼ。
同じ「さくら」の名前を持つこの二つ、実は全く違う植物だということをご存じですか?
桜の木にさくらんぼがなると思っていた方も多いはず。
本記事では「さくらんぼ」と「桜」の違いをわかりやすく解説し、その意外な関係性や知られざる豆知識もご紹介します。
桜とさくらんぼの基本的な違い
観賞用桜と食用桜の特徴
桜は主に観賞用として親しまれる花の代表であり、日本各地で春になるとお花見が行われるほどその美しさは人々を魅了します。
一般的な観賞用桜にはソメイヨシノや八重桜などがあり、特徴的な淡いピンク色の花弁が美しく咲き誇ります。
一方、食用桜といえば「さくらんぼの木」を指し、その果実である「さくらんぼ」は世界中で愛されている果物です。
さくらんぼの木の花は桜の花とよく似ていますが、全体的に白っぽく、実を結ぶために特化した構造になっています。
桜とさくらんぼが共通する点と異なる点
桜とさくらんぼはどちらも「バラ科サクラ属」に属する植物であり、春に白や淡いピンクの花を咲かせる共通点があります。
しかし、それぞれの役割と特性には明確な違いがあります。
観賞用の桜は美しい花を観るために栽培されるのに対し、さくらんぼは果実を収穫するために育てられます。
また、実際には食用桜と観賞用桜は別の種に属しており、「さくらんぼの木と桜の木の違い」は育てる目的や品種の形質にも表れています。
さらに、桜の実は酸味や苦味が強く食用には適しませんが、さくらんぼは品種改良が進み、甘くて美味しい果実を実らせます。
桜の名前が与えられた理由と背景
日本では「桜」の名前が古くから親しまれ、春の象徴として文化や生活に深く根付いています。
そのため、同じサクラ属の植物で果実を提供する木にも「さくらんぼ」という名前が与えられたのは自然の流れと言えるでしょう。
しかし、歴史的背景としてはさくらんぼが日本に伝来したのは明治時代以降であり、それ以前は馴染みが薄いものでした。
観賞用の桜と果実を実らせるさくらんぼ、それぞれに桜という名が与えられた背景には、日本人の自然に対する親しみと季節感が大きく影響を与えていると考えられます。
桜にさくらんぼはならない
「桜の実とさくらんぼの違い」としては決定的なポイントがあります。
それは観賞用の桜に甘く美味しいさくらんぼが実ることはないという点です。
観賞用の桜には果実がなる場合もありますが、これらは食べられる品質ではなく、酸味と苦味が強いため主に野鳥の餌となることが多いです。
一方、さくらんぼの木は甘味や風味が優れた果実を実らせるよう品種改良されています。
このような違いから、「さくらんぼの木と桜の木の違い」を理解する上で重要なポイントとなります。
さくらんぼの起源と歴史
西洋実桜(セイヨウミザクラ)の歴史
さくらんぼの主要な品種の多くは、西洋実桜(セイヨウミザクラ)に由来しています。
この西洋実桜は、ヨーロッパを中心に古代から親しまれてきた果樹で、その歴史は紀元前6000年ごろに遡るとも言われています。
ギリシャやローマ時代にはすでに栽培されており、古代ローマの将軍ルクルスが戦利品として持ち帰ったという記録も残っています。
こうして西洋実桜はヨーロッパ全土に広がり、品種改良を経て現在のさくらんぼのような甘みや酸味を兼ね備えた果実に進化しました。
また、現在日本で栽培されている代表的な品種の「佐藤錦」や「紅秀峰」なども、この西洋実桜を基にした品種であり、美しい見た目と濃厚な甘みを特徴としています。
西洋実桜は「さくらんぼの木と桜の木の違い」を語る上でも重要であり、観賞用の桜とは種が異なるため実の風味も大きく異なります。
さくらんぼが日本に広まったきっかけ
日本におけるさくらんぼの歴史は、明治時代にまで遡ります。
明治元年(1868年)、ドイツ人ガルトネルが、北海道に西洋実桜を元とした桜桃を植えたことが最初とされています。
この試みは十分に広がらなかったものの、続いて明治8年にアメリカから25種類の苗木が日本へ輸入され、これが本格的な栽培の始まりとなりました。
その中でも、気候や風土が適していた山形県では栽培が成功し、さくらんぼ栽培の中心地となりました。
山形県は現在でも日本一のさくらんぼの産地として知られており、全国の栽培面積の約70%を占めています。
加えて、生産量シェアは約4分の3を誇り、「佐藤錦」などの名品種もこの地域で誕生しました。
さくらんぼが日本に広まる背景には、日本の農業者たちによる熱心な品種改良と適切な栽培方法の確立がありました。
これにより、短い収穫期間にもかかわらず、世界的にも評価の高い日本産さくらんぼが育まれています。
桜の実とさくらんぼの違いを意識しながら、多くの努力が行われた結果、現在のさくらんぼ文化が広がったのです。