どんな料理にもストーリーがありますが、皆さんはお好み焼きの歴史についてどれくらい知っていますか？
「ただの粉もの料理」と思われがちですが、その裏には地域や時代によって育まれた深い物語が隠されています。
本記事では、お好み焼きが日本中で愛され続けている理由や、その広がりの背景を掘り下げ、驚きの発見をお届けします。
読むことで、次にお好み焼きを食べる時、その味わいがさらに特別なものになるかもしれません。
お好み焼きの起源
安土桃山時代の「麩の焼き」
お好み焼きの歴史を辿ると、その起源は安土桃山時代に遡ります。
この時代に千利休が「麩の焼き」と呼ばれる料理を考案しました。
これは、うどん粉を水と酒で練り上げて焼いたもので、茶菓子として親しまれていました。
現代のお好み焼きの形とは異なるものの、この麩の焼きが、後の粉物文化につながる最初の一歩であったと言えます。
そのシンプルながらも洗練された味わいは、当時の人々の生活に豊かさを添え、今日まで続くお好み焼き文化の礎となっています。
江戸時代の小麦文化
さらに時代が進み江戸時代になると、日本で小麦の消費が徐々に広まり始めます。
吉備真備という唐で学んだ学者が、粉食文化を積極的に広めようとし、大学寮で「煎餅（センビン）」と呼ばれる小麦粉を水で溶いて平らに焼いたものを学生に振る舞いました。
これがさらなる粉物料理への関心を高め、お好み焼きの歴史の中で重要なステップとなります。
この時代、煎餅のような調理法が広まり、日本国内での小麦文化が形成されていきました。
この流れが、後に庶民の味としてお好み焼きが発展する重要な基盤を築くことになったのです。
一銭洋食からの進化
大正時代になると、「一銭洋食」と呼ばれる料理が庶民の間で親しまれるようになります。
この一銭洋食は、お好み焼きの歴史において重要な役割を果たしました。
小麦粉を水で溶き、それを鉄板で薄く焼いた上にネギや削り節をのせたもので、手軽に作れて安価だったため、特に子供たちのおやつとして人気を集めていました。
この一銭洋食が、のちの広島お好み焼きの歴史や全国の粉もの料理へと発展を遂げていくのです。
お好み焼きの進化と地域化
東京でのもんじゃ焼きの影響
東京で発展したもんじゃ焼きは、お好み焼きの歴史において重要な存在です。
もんじゃ焼きは主に関東地方で親しまれており、その発祥は明治時代に遡ります。
当時、小麦粉を水で溶き、具材と混ぜて鉄板で焼くスタイルが庶民の間で広まっていました。
この手軽さと家庭的な雰囲気は多くの人に支持され、特に子どもたちに人気を集めました。
もんじゃ焼きで培われた調理法や楽しむ文化は、その後のお好み焼きの地方での発展に大きな影響を与えました。
大阪での一銭洋食とその変容
大阪では、お好み焼きの発展に大きく貢献したものとして「一銭洋食」が挙げられます。
一銭洋食は大正時代に誕生し、安価でお腹を満たせる食事として庶民に広く親しまれていました。
一銭洋食は鉄板の上で焼かれることで、サクサクとした焼き加減と香ばしい風味が特徴です。
昭和初期にはさらに具材が追加され、現代のお好み焼きの原型となりました。
この変容は、関西におけるお好み焼きの基礎を築き、豊かで様々なバリエーションが開発されるきっかけとなっています。
広島風お好み焼きの誕生と発展
一方、広島では独自の進化を遂げた「広島風お好み焼き」が誕生しました。
広島お好み焼きの歴史は、1945年の原子爆弾投下後の復興とも深く結びついています。
この頃から、広島で新たに始められた一銭洋食にキャベツが加わり、ボリュームのある食事として進化しました。
具材を層状に重ねて焼き上げるスタイルや、鉄板の上で直接ヘラを使って食べるスタイルが広島風の特徴です。
この特有の調理法は、多くの人々に新鮮な驚きを与え、今でも広く愛されています。
広島お好み焼きは戦後復興のシンボルとして、地元の人々の心に深く根ざしています。
お好み焼きアラカルト
なぜお好み焼きと呼ばれるようになったのか
お好み焼きと呼ばれるようになったのは、その名の通り「お好み」の具材を選んで焼くスタイルに起因しています。
昭和初期には、手軽に様々な具材を混ぜた食べ物として親しまれ、特に大阪や広島でその地域特有の「お好み」が加わることで、独自の発展を遂げました。
特に戦後の混沌とした時代において、限られた材料で満足感のある食事を作ることができ、多くの人々に受け入れられた結果、庶民の食卓に登場する機会が増えていったのです。
小麦粉やキャベツなど手に入りやすい材料を基に、多様なトッピングを施すことができることから、自然発生的に「お好み焼き」と呼ばれるようになったと言われます。
大阪と広島のお好み焼きの違い
お好み焼きは大阪と広島で異なる魅力を持ちます。
大阪では、すべての具材を混ぜ合わせてから焼くスタイルが主流です。この方法は、材料を一体化させて焼くことで、均一な味わいと食感を楽しむことができます。
また、「お好みソース」をたっぷりかけることで、日本人の舌に合った濃厚な味を引き出します。
一方、広島のお好み焼きは、具材を重ねて焼くのが特徴です。
まず、生地を薄く伸ばし、その上にキャベツやもやし、豚肉などを順に乗せていくため、素材それぞれの食感と風味を楽しむことができます。
広島お好み焼きの歴史では、戦後の復興過程でキャベツを多く使うようになり、それによりボリューム感と栄養価が増す結果となり、広島市民に広く愛されるソウルフードとなりました。
